" 窩 " 2001,  68.5×32×13cm  錫・アンチモン Tin, Antimony

Photo by  小松  稔
確かで幽かに透視しうるもの     - 風景を解像する眼の探索 辺見 庸 -

  霜柱の愛撫に鳥肌立たせた肉界の地表。地下動脈を剥きだしにした廃墟の都市。禁忌に呪縛されたエロスの即身仏。
  かつてテンペラとの混合油彩で、立ち騒ぐ海の彼方に、霧の迷いと縺れあった創性の神話は、いま終末の情況を照射凝縮して、熱的ゆらぎを冷却し、ボイドを内包した妙なる皮膚の屍体として発光している。
  佐渡の蠟型鋳造を家伝した宮田宏平の次男洋平の技術を見習い、1992年以降、浮遊する地表や表徴されるエロスの解体新書を描像する透視者となった尾藤敏彦。それは風景を解像する「眼の想像力」を援用して、収束される歴史の記憶を、仮空都市構築の持続する廃墟に向かう意志として、フラクタルな接線で空間に曝す、哀しみにみちたエロスの黙示録を編纂したのだ。これはその内なる時間をページのようにめくってみせた皮膚の博物学である。

ヨシダ・ヨシエ(美術評論家)

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